住まいの原点
私たちは、人生の大半を住まいの中で過ごします。
一日の半分以上、つまり人生80年とすると、
およそ40年以上家の中で暮らすことになるのです。
どんな住まいで暮らすかによって、人生観や考え方、
感性までも変わってくるかと思います。
豊かな人生を育み、記憶と物語をつくる場所として住まいは必要とされます。
地球上のあらゆる生物が何らかな形で巣をつくります。
それは、自然の原理と知恵によって施されています。
人間の住まいには、生き物と違って、何度もつくるわけにはいきません。
人間の知恵と賢さを活かし、地球環境にも配慮し、
日本の気候風土にあった、日本人の身体に適した住宅、
自然と人と環境に向き合った住居こそが、
住まいの原点ではないかと考えています。




家を育てる
現在の日本の住宅年齢は、約30年といわれています。
なぜ、日本の住宅はこんなにも早く壊されるのでしょうか。
これは、耐久性とは別に、住まいに対する意識が問題でもあるようです。
建物に使用する建材は、全て雨風や紫外線により劣化・風化します。
自然素材の家は傷やあせた色も風合い、歴史となり、丁寧に維持することで
「経年変化を楽しめる家」となっていきます。
家を育てていくことは、地域の風景をつくっていくことにも繋がります。
また、「愛着」が生まれる家にするためには、
普段から掃除やお手入など、建物に愛情を注ぐことが大切です。
家は「使い捨て」ではありません。
2世代、3世代にもわたって受け継がれるような
愛着のある家になることを願い、
一棟一棟に想いを込めて、つくり続けています。




職人を未来へ生かす
真の職人を意味を考えると、魂と技術の伝承とも思えます。
積み重ねの上から誕生し、そこから広がっていく。
単に表面的な技術を継承するだけでなく、
次の進化を生み出すために、深く技術を学ぶ。
面倒くさい手間のかかるようなことでも、
続けていくからこそ価値があるのです。
その丁寧さや奥深さ、心意気を活かせる現場。
見たり触れたりすることで、使う人には伝わっていきます。
職人には、受け継がれてきた技術や風習、しきたりなどを残し、
伝え、継承し、革新していく大切な役割があるのです。




あるものを活かして、ないものをつくる
古い建物の再生は、ただ全て新しくすることだけではありません。
古いものと新しいもののバランスが共存する状態を創り出すことも大切です。
「過去、現在、未来」へと時代を繋ぎ、新たな息吹が生まれます。



